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重箱のすみ

こんな世界で戦う7人のことを書きたくて

1番になれない人の物語

ちょうど一週間前に行われたAKB48選抜総選挙。48グループ内に、特別な想いを持って応援するほどの推しメンバーがいるわけではないのだが、可愛い子達が歌って踊っているのを見るのは単純に楽しい。そんな軽率な興味から、私はTVのチャンネルをフジテレビに合わせた。この日は帰宅が遅くなってしまったため、9位のぱるるのスピーチの時間から見始めた。

そんな中、今年の年末に卒業予定で、今回の総選挙が最後になることを公言している高橋みなみが4位で呼ばれる。彼女のAKBメンバーとしての最後のスピーチが始まる。それまで、何気なくテレビを見ながら、スマホでAKB好きの友人とLINEしていた私なのだが、彼女のスピーチに引き込まれて手が止まった。気付いたら目が離せなくなっていた。

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私は、入って1年ぐらいになるときにあることに気づきました。私はこのグループでは、1番になれないということです。同期には前田敦子がいました。次の期には大島優子がいました。みんなすごくて、カリスマ性があって、絶対的人気があって。

 私は歌手になりたくて、芸能界を目指しました。たくさんオーディションに落ちました。そして、受かったのがAKB48でした。歌手になりたいけど、アイドルになりました。かわいいとか、アイドルとか全然わからなくて、どうすれば人気が出るのかもわからなくて。でも、このグループがすごく好きになったから、すごく頑張りたいなって思って、気づいたらキャプテンになって、総監督になっていました。

 そして総選挙があって、私なんかが「1位になりたい」なんて言っちゃいけないなって思いました。グループが好きだからこそ、グループの先を見ました。この人がセンターになったほうがいいな、この人が次1位になったらいいんじゃないか。自分のことなんて、どうでもよかったんです。

たかみなが語ったのは、「1番になれない自分」というリアルだった。AKB48という、現在の女子アイドル界のトップであるグループに所属し、自身も総監督・人気メンバーでありながら、自分は1番になれない、センターに立てないという事実。

アイドルに何を求めるかというのは、ファン一人ひとり全員違って、まさに千差万別だろうと思う。歌やダンスやパフォーマンスに惹かれる人、憧れの存在や理想のタイプとして眺める人、 もちろん触れあえないことは分かっていても疑似恋愛を楽しむ人、その人の性格やポリシーも含めてアイドルの姿を人生の目標とする人……。もちろんそれらは一つの要素だけではなく、そういう要素がいくつも合わさって「好き」を構成しているんだと思う。じゃあ私の中でアイドルに求めること、期待することはなんだろうと考えた時に、まさにこの、「1番になれない中で頑張る」人のストーリーを応援したいという気持ちの比率が強いことを感じた。

グループ全体の未来を背負って、センターに立つメンバーの孤独や栄光の物語を追いかけるのも、とても深いものだろう。けれど私は、1番になれない人の物語に、惹かれてしまう。

 

私は中学・高校と吹奏楽部でクラリネットをやっていた。私が通っていた中学は全校生徒の数がそもそも少なくて、必然的に吹奏楽部も小規模だった。先輩たちも貴重な後輩をかわいがってくれ、たくさん褒めてもらえるアットホームな部活だった。しかし、高校生になって県外の高校に進学すると、そこは全校生徒も多く、吹奏楽部も3学年合わせて100人を超える大所帯だった。中学の頃には、人数が少なかったから、演奏会があれば全ての曲を吹くのが当たり前だった。けれど高校になってからは違う。激しい競争があり、演奏会の時には全員が全曲に出れるわけではなく、1曲ごとにメンバーが変わる。

さらに、吹奏楽は一つの楽器でもパートが分かれていて、その楽器だけでハモリの音程が鳴らせるようになっており、クラリネットは1st,2nd,3rdという分け方をされることが一般的。1stが一番音程も高くメロディーラインを任される機会が多いし、時々ソロパートもある花形だ。私は、中学の頃には1stから3rdまで色々なパートを経験させてもらっていた。けれど、高校の部活では、1stは実力主義で決まって行き、私はほとんど毎回3rdだった*1。中学の頃の私は、まさに井の中の蛙だったのだと思い知らされた。人数が少なかったから全曲出ざるを得なくて、その上で色々な経験をさせてもらうために1stをやらせてもらっていたのだ。実力で選ばれたわけではない。高校に入ってから、現実を知った。その環境の変化に打ちのめされた。

高校1年の秋、自校の定期演奏会があった。その中で私は、とても好きな曲のメンバーに選んでもらった。嬉しくて必死に練習した。しかしどうしても上手く吹けないフレーズがあった。先輩につきっきりで教えてもらっても全然出来ない。焦りがつのるほどタイミングがずれていく。

演奏会前日に先輩に呼ばれた。「ごめんね、さゆちゃんがすごく頑張っているのはわかるんだけど……」そう前置きしてから、私がメンバーから外されることを告げられた。私の代わりにその曲に出たのは、1stに抜擢されることも多い同期のエースだった。彼女はもともとこの曲に出ない予定だったからほとんど練習していないはずなのに、それでも私よりずっと上手かった。

どんなに努力しても、天性のセンスに勝てないこともあるのだと、人生で初めて自覚した瞬間だった。

 

たかみなのスピーチを聞きながら、私はその時のことを思い出していた。 

私も彼女と似たような経験があるといえばあるが、同列に語るのはおこがましい。それは一つの高校の一つの部活内の話であり、世の中から見たら本当に些細な話であるからだ。同じクラスの友人すら、私が喋るまでそんな話は知らなかった。当たり前と言えば当たり前だ、部活内の話なんて自ら話さなければ、他の部活の友人は知る機会はない。

でもアイドルは違う。センターに抜擢された人の物語も、センターを外された人の物語も、センターに立てない人の物語も、全て世間に包み隠さず映し出されて、周知のストーリーとなる。どんなに努力しても、前田敦子がいて、大島優子がいて、自分がセンターになれないと自覚して、それでも人前に立ち続ける。そして、それを世の中の沢山の人に知られているというのは、どれほどのプレッシャーだろうか。

 

私がKis-My-Ft2という存在を認識したのがいつなのかは、ハッキリ覚えていないけれども、その頃にはもう、ファンじゃない外野からでも明確にわかるほどの衣装格差があった。前の3人、後ろの4人。でも、中居もまだそれを大々的にイジっていたわけではなかった頃だと思う。衣装も違う、カメラにもほとんど抜かれない、コメントも振られない。私はその状況を、「かわいそうだ」と、感じてしまった。すごく鮮明に覚えている。中でも、後列にいる千賀健永のことが気になった。日本人離れした彫りの深い美しい顔立ちなのに、笑うと少年のようにかわいらしい。音楽番組を見てもあまりカメラに抜かれることはないが、ダンスのスキルも他メンバーと比べて劣っているようには見えない。それなのに、どうしてこんなにあからさまな格差をつけられてしまうのかな、かわいそうだな……。私はこの時、彼らへの興味をシャットアウトする。

その彼が、かつて今の玉森の位置にいたという事実を認識したのは、それから数年後のことだ。本格的にキスマイにハマってから彼らの歴史を勉強し始めて、その時に初めて、千賀がセンターにいた時代もあったのだと知った。最初はとても驚いたし、かつてセンターだったのに派手な格差をつけられて、やってられないという思いもさぞ強かったことだろうと勝手に察してしまった。でも、色々な雑誌を読んだり、インタビュー映像を見る機会が増えて、舞祭組の4人の考え方に触れると、そういう捉え方も良くないなと思い始めた。もちろん、悔しい思いもあっただろうけど、今のポジションで全力でやる、自分の良さは変えずにいながらも、キスマイや舞祭組のことを考える、そういう姿勢を素直にかっこいいなと思った。

千賀だけではない。自分はキスマイのガヤ芸人だと決め、バラエティの場で生きていくと決意した二階堂。オタ芸をやりたいとみんなを説得して、ジャニーズ内の新しい道を開拓した宮田。中居に見出され、歌も喋りも演技もいまいちだけどそれでも全力でやることで自分の魅力を見せる横尾。

考えてみればこの世の中、会社でも学校でも、その人が今いる場所で1番になれる人の方が少ないのだ。そんな中で、1番になれない人達の物語は、同じく今いる場所でどんなに頑張っても1番になれない人達に勇気を与えているのではないかと思う。

一方、そうやって共通項がありながらも、アイドルと一般人で一番違うところは、グループの中で1番になれなくても、グループとして1番を目指すことができるところだ。学校の部活だったら3年で卒業する。会社だったら辞めれば違う会社で1番になれるかもしれない。でもアイドルグループは違う。彼ら彼女らがアイドルでいる間は、そのグループとずっと一緒に歩んでいくことになる。一蓮托生だ。自分が1番になれなくても、グループとして1番を目指せばいい。自分にだって、センターにだって、足りないところはある。そこを補いあってトップを目指せばいい。それが、一般人にはない部分、夢のある部分だなと感じる。

 

 高橋みなみは、スピーチの最後にこう言った。

 私は毎年、「努力は必ず報われると、私、高橋みなみは人生をもって証明します」と言ってきました。努力は必ず報われるとは限らない。そんなのわかっています。でもね、私は思います。頑張っている人が報われてほしい!
 みんな目標があると思うし、夢があると思うんだけど、その頑張りがいつ報われるかとか、いつ評価されるかとかわからないんだよ。わからない道を歩き続けなきゃいけないの。
 きついけどさ、でもね、誰も見ていないとか思わないでほしいんです。絶対ね、ファンの人は見ててくれる。これだけは私はAKB人生で本当に一番言い切れることです。

どんなに頑張っても1番になれない、努力がなかなか報われない、どうしたらいいのかわからない。

そう悩みながらも、ステージでは最高の笑顔でキラキラ輝き歌い踊るアイドルのことを、私は見続けて行きたい。賛辞を贈りたい。そういうファンの一つひとつの行動が、努力が報われる世界を作ると信じたい。

そんなことを考えながら、私は今日も、1番になれない人達の物語を追いかける。

 

*1:3rdが悪いわけじゃないんです!3rdには3rdの良さがありますもんね