重箱のすみ

アイドルとの距離感の取り方は、いつまでたっても難しい

自分の作ったストーリーを超えてゆけ

久しぶりの更新になってしまいました。4月は急激に職場の環境が変わったことに対する精神的な余裕の無さなどで、なんというのかな、「アウトプット欲」というのが全然なくなってしまいまして。色々な番組を見て感じたことはあったのですが、それを書きたいと思うまでに至りませんでした。

そんな中、先日、1ヶ月以上遅れてやっと、3/29放送の『UTAGE春の祭典2時間SP』を見ました。そしたら色々と書きたいことが出てきて、私のアウトプット欲が久々に喚起されまして。もはや時間が経ち過ぎているのですが、久々のブログはこちらの話にしようかと思います。

 

初めに私のスタンスを明確にしておくと、私はSMAPも中居*1もキスマイも大好きだけれど、UTAGEという番組は正直に言って好きではない。もちろん、毎回舞祭組の新しいパフォーマンスを見せてくれて、色々なことを挑戦させてくれることに対しては本当に有り難いと思っているけれど、それ以外の要素でどうにもひっかかることが多すぎる。例え、出演者が好きでも、感謝していても、だからといってその番組の全てを肯定する必要はないと思っているし、だから今後もするつもりはない。けれど、やっぱり、UTAGEって一面的なことでは判断できなくて、すごいなと思わされる部分もあるのだ。

それは何よりも、『ストーリー性』を全面に打ち出すところ。

今回の2時間SPを見ても顕著だけれど、とにかくUTAGEは、「シンプルにパフォーマンスする」なんてことをほとんどしない。毎回、そのパフォーマンスをするアーティストの舞台裏を放送し、本番に至るまでどれだけ苦労してきたかを強調する。グループ内で些細な揉め事があろうもんならそれを膨らませて深刻にして放送する。そうやって、パフォーマンス自体に過剰な意味づけ・ストーリー付けを行う。

さらに一例としては、以前のSPの際に、山口百恵さんの「いい日旅立ち」を、この曲を作詞した谷村新司さんと、百恵さんの息子である三浦祐太朗さんが一緒に歌うというコラボを行っていたり。一時代を築いたモーニング娘。OGと、モー娘世代ど真ん中のAKBが一緒に踊るコラボだったり。そうやって、過去と現在をつなぐストーリーを作っている番組だ。

初めは、シンプルにパフォーマンスを見せてくれるだけではダメなのだろうかと思い、こういう過剰なストーリー性に疑問があった。でも、見続けてみて、これだけ音楽番組が減少してしまって、最近のヒットチャートに興味がない人も増えてしまって、「音楽文化」というものが世の中の中心ではなくなった時代に、それを復権させるとしたら、やはりこうして、ストーリー性を喚起することが効果的なのだろうなと思った。こうすることで、音楽に興味がない人の心に、ドキュメンタリー的な意味づけをして入り込んでいくことが重要なのだろうと。

今回のスペシャルでも、最後に男性アーティスト全員でChageさんと一緒に「YAH YAH YAH」を歌ったところなんてその最たるものだった。諸事情でこれが表立って歌えなくなってしまったChageさんとともに、「歌に罪はない」とばかりに、笑顔で、歌えるという事実。さらに、中居とつよぽんがこの歌を歌っている姿を見て、「色々あったよね!!!大変だったね!!!私も一緒にアイツを殴りに行きたいよ!!!」などと思ったりして(笑)(誰かは言いません)。まぁこうやって、ストーリーがあるからこそ、余計に音楽が人の心を打つのだろう。音楽は、メロディーラインがどうとか、コード進行がどうとか、そういうことだけで語れるものではないんだろうな。

 

ただ、普段のパフォーマンスはそれでいいけれども、「バトタイム」の時にまで、こういう過剰なストーリー性を持ち出すのは、どうしても納得できなかった。

バトタイムは、2組がパフォーマンスをして勝敗をきめるものだけれども、その投票の基準は「どちらが心を掴まれたか」という、実に曖昧なものだ。ダンスや歌の上手・下手だけで判断するものではないという。けれど、そういう場にストーリー性を持ちだしてしまうと、パフォーマンスよりも、「どちらのストーリーがインパクトあったか」というエピソード対決になってしまうと思ったのだ。

だから、今回の千賀さんのピアノがバトタイムだと知った時、率直に言って、本当に嫌だった。今回の放送前に、Momm!!内で事前特番のようにしてSPに挑む出演者の舞台裏が紹介されていたのだが、以下はその中で、千賀さんのピアノ対決がバトタイムだと紹介された時の私のツイート。

 

 

私はピアノのバトタイムと聞いて、どうしても、前回のバトタイム*2を思い出さずにはいられなかった。川畑さん&千賀さんの対戦相手は、T.M.Revolutionさん&乃木坂46生田絵梨花さん*3。彼女は幼少期からピアノを習っていて、抜群の腕前で、ハッキリ言って、ピアノ歴半年ほど*4の千賀さんが勝てるわけなどないのだ。本番の演奏でも、千賀さんはミスを連発してしまったが、生田さんは緊張しながらも完璧な演奏。普通に考えれば、技術だけで見れば、生田さんが勝つことは明白の内容だった。

けれども、スタジオにいたお客さんは千賀さんに票を入れた方が多かった。それは、ストーリー性を打ち出していたこの番組ならではの結果だろう。中居は投票前に、「『どっちが頑張ったでしょう対決』じゃないですからね。エンターテイメントとして魅了することが出来たのかが大切です」と言っていたけれど、それは無理な話というか。何よりもUTAGEという番組自体が、パフォーマンスに至るストーリーまで含めたエンターテイメントを行っている。ピアノ初心者で、間違いも多くて、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、必死に最後まで頑張り抜いた千賀さんが、ストーリーも含めて勝ったということだ。

けれど、何よりも、誰よりも、本人がそれに納得していなかった。千賀さんは結果が出た直後、涙を浮かべながら「勝ってすみません」と言った。勝ったのに「すみません」。言わば、『ストーリーで勝たせてもらってる』ということを、誰よりも本人が、よくわかっていた。そういう評価をされたかったわけじゃないだろうに。完璧な演奏を見せたかっただろうに。

悔しそうだった。納得できなさそうだった。居心地が悪そうだった。そして、ピアノを弾くことが苦しそうだった。そんな姿は見ていてつらかった。だからバトタイムは好きじゃない。今回も同じようなストーリーが繰り広げられるならまっぴらごめんだ。

 

……と思っていたんだけど。

その翌週、同じく、Momm!!内でUTAGEの事前特番のようなことをやっていて。そこで発表された千賀さんの対戦相手は、二階堂さんだった。今回のSPのこの企画まで、本番の2週間前まで、ピアノに触れたことすらない生粋の初心者。言ってみれば、一年前の千賀さんと同じ立場だ。今まで『ストーリーで勝たせてもらってた』千賀さんが、今回はそのストーリーが使えない。そういう相手に勝てることができるか、というのが今回のストーリーだ。

あぁ、そう来たか、やられた。想像もしていなかった。

まぁなんというか率直に言って、こういうところは、「上手いな」って思わざるをえなかった。私のような素人が考えるストーリーをあっさり超えられてしまった。UTAGEのスタッフ陣の皆様はやっぱり、良くも悪くも、『ストーリーを描くプロ』なんだなぁと、思わざるをえなかった。

対決直前、 自分の対戦する相手が二階堂さんだとわかった瞬間の千賀さんの表情がリアルだったなぁ。3秒くらい固まって、状況を飲み込んでからやっと表情をゆがませて、「一番相手にしたくなかった奴」だと正直に吐露する。自分の作ってきたストーリーが違う人に行くという面もありつつ、さらにその人が何よりも、自分に一番近い所で常に切磋琢磨してきた唯一無二の仲間でライバルだということもあるんだろうな。

 

動揺しながらもステージに上がる千賀さん。またもやプレッシャーにつぶされそうになっていて、演奏直前はどうなることかと思ったけれど、でも。演奏が始まったら、それは杞憂だったとすぐにわかった。ちょっと危ういところはあるけれども、とても落ち着いて一つひとつの音を大切に弾いていて。川畑さんの歌と一体になっていて、心からこの音楽の魅力を表現しようとしていることが伝わってきて。そして、何より、楽しそうだった。もう「初心者が頑張っている姿で感動を呼び起こす」というストーリーは卒業だ。そういうことではなく、音楽そのもので感動させてくれた。自分の作ったストーリーを超えて行った瞬間だった。

今までの千賀さんのピアノ演奏の中で、一番美しくて、一番心を打たれたよ。

本当に素敵だった。

対戦相手の二階堂さんの演奏も、本当に素晴らしくて、二週間前に初めてピアノを触った人とは思えなかった。対決の結果としては、千賀さんの勝利だったんだけど、それは努力の量を比較しているものではないと思う。千賀さんが、自分の過去のストーリーを脱却して、純粋に演奏だけで人の心を打ったことが、評価されたんじゃないかなと思います。

……ただ、まぁ、もっと言ってしまうと、「『頑張っている初心者』ということで評価されていた人が練習を重ねて、ついにそのストーリーを脱却して音楽だけで評価されるようになった」ということ自体が大きなストーリーになってしまうような気もするのですが……。でも、こう考え始めると延々とこういう考え方が続いてしまうので一旦ここでやめます(笑)

 初心者ということで、これまで、上手くできなくても多めに見てもらっていたところが多々あったはずで、でも本人はそれを良しとしていなかったはずで。今回やっとそのストーリーを卒業できたからには、これからはもっともっとピアノを楽しんでほしいな。その本人の楽しさが、音にそのまま反映されて伝わって行くような、そんな演奏になるといいななんて、無責任だけどそんなことを思っています。本当にお疲れさまでした。

 

ここからは余談ですが、今回のUTAGE!SPのゲストはつよぽんで。私が小学生の時からずっと大好きだった人で。そして、千賀さんと二階堂さんもつよぽんのことを「かっこいい」とか「憧れ」とか「理想の演技をする方」的なことを何度も雑誌で言ってくれていて。そんなつよぽんがスタジオで、このニカ千のピアノ対決を見ていてくれて、「ニカちゃんと千ちゃんが頑張っていたから自分も頑張らなきゃ」という内容の発言をしてくれたことが感無量でした。

OPのつよぽんと舞祭組のダンスもとってもカッコよくて大興奮で、あぁ、また、早くスマキスコラボが見たいなと思ったんでした。難しいかもしれないけど、大切なことだからもう一回言います。そろそろスマキスコラボお願いいたします。

 

結局、散々文句を言っていても、最後には楽しまされてしまう。

UTAGEはやっぱり、一言では言い表せない。

本当に難儀でトンチキでズルくて酔狂で、だけど楽しい番組です。

 

*1:ちなみに私は中居のことを中居と言いますが、それはある種、中居のことを歴史上の人物のように捉えており、敬称が逆に不自然に感じるからです。織田信長のこと「信長さん」って言わないでしょ。ペリーのこと「ペリーさん」って言わないでしょ。そういう感じです(?)

*2:2015/3/31

*3:UTAGE! バトタイムで生田絵梨花は感動させた千賀健永に負けた – 乃木坂46の情報

*4:その当時の時点で