重箱のすみ

アイドルとの距離感の取り方は、いつまでたっても難しい

この時代のチャンピオン

色々なものを見たり、読んだりして、改めて思ったこと。

 

先日の、稲垣の噂の同居人「ヒロくん」との生活に密着した番組、ISORO。そのレビュー記事ですごくいいなと思ったものがある。こちら。

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ヒロくんとの関係性、稲垣吾郎、そして中居正広という人物についても色々と考えたいところはあるのだが、今回はあえてそれ以外の部分を引用したい。

かつて、アイドルは文字通り偶像だった。“お人形”であることを求められた。だが、80年代に入り、アイドルは“自我”を持ち始め、80年代後半には、同じ“人間”であり、手に届く存在であることが強調されるようになった。いわば、アイドルの“人間宣言”である。その流れの中で、SMAPはさらにそれを一歩進めた。アイドルではタブーとされてきた下ネタや恋愛話を語り、失敗話や自らのダメな部分を晒すようになったのだ。言ってみれば“ダメ人間宣言”である。

 そうしてSMAPは新たなアイドル像を提示することで、アイドル界のトップに立った。

「ダメ人間宣言」というフレーズが、とても良くて印象に残った。

SMAPは、かつてない形で自分達の活躍の場所を広げてきた第一人者だ。「アイドルといえばかっこいい」「クール」「私達とは違う世界の存在」と考えられてきた時代の常識を覆し、上手くいかないところやカッコ悪いところも見せることで、多くの人々の心を掴んできた。

そして今、その路線を一番近いところで引き継いでいるのが、私が今一番熱を入れて応援するようになってしまったKis-My-Ft2なのではないかと感じている。

 

先日、日本テレビ系列で放送されていた、「耳が痛いテレビ」という番組。2時間の番組のうち、半分くらいしか見れなかったのだが、なかなかハードな内容だった。

natalie.mu

芸能人に一言物申したい一般視聴者を応募し、その中から選ばれた人が実際に、スタジオにいる芸能人にクレームをぶつける。さらに、ディレクターがカメラを持って街に繰り出し、一般の人に「最近のテレビについてどう思いますか?」「芸能人に何か言いたいことありますか?」などとインタビューして回る。それをよりによってテレビ自身がやるのかという、かなり攻めた番組内容だった。

そのインタビューの中で、特に印象に残った発言があった。スーパー銭湯の休憩所のようなところで一人くつろいでいるおばちゃん。スタッフがカメラを向け、おばちゃんに話を聞き始める。すると彼女は、バラエティ番組などで、他番組の宣伝のために出演する番宣ゲストの芸能人に対する不満を話し始めた。

あぁいうゲストの芸能人の人達って、せっかくテレビに出ているのにあまり楽しそうじゃなかったり。あんな簡単なことでお金がもらえるのかって思うね。私たちなんて、毎日必死で働いて、ここ(銭湯)にきてこうやってラーメンとビールを注文して、それが楽しみだっていうのに……。

私は録画していなかったので見返して文字起こしすることが出来ず、一字一句正確ではないのだが、おばちゃんはこのようなニュアンスのことを言っていた。

この時に思った。きっと同じようなことを思っている視聴者は多いのだろうと。

 

かつて、芸能人は「テレビの中の人」という言葉通り、自分とは別の世界の人間であり、決して触れあえないという意識が強かったのではないだろうか。けれど、インターネット、特にTwitterの普及によって、芸能人本人がやっているアカウントに直接、意見や文句を言うこともできるようになった。

その大きな変化と時を同じくして、先行きの見えない不安な社会、働いても働いても生活は苦しく給料は上がらない。社会の闇は一層深くなっている…。そう感じた視聴者は、芸能人のアカウントに突撃したくなってしまう。楽をして稼ぐな、不倫をしておいてテレビに出るなんてもってのほかだ…と。その一連が「○○がテレビの発言で炎上」とニュースサイトに取り上げられたりするため、その流れはさらに加速していき、ついにはテレビでテレビの不満を言うなんていう番組がゴールデンで放送されてしまった。…そんな時代になっているような気がする。

つまり、今の視聴者の中には、楽をして稼いでいるように見える芸能人が嫌いだ、という人達が一定層いるのではないだろうか。今私たち一般人は本当に生活が苦しいんだぞ、お前らも同じ苦労を味わってみろと。

テレビは、もう夢を見せる場ではなくなった。

テレビは、リアルを映し出さないと満足されなくなった。

 

いきなりここで結論を言ってしまうと、

Kis-My-Ft2が今これだけの人気を集め、ファンクラブ30万人突破したり、2014年の年間アーティストトータルセールス4位を取ったり*1、さらには私のように今までジャニーズとは無縁の人生を過ごしていた層もファンにしてしまうような実績を収めているのは、

彼らが、上手くいかないところも、カッコ悪いところも全部さらけ出して、それでも体を張って、自分の弱さに打ち勝って必死で挑戦していくところが、今の時世にマッチしていたからではないだろうか。

キスマイBUSAIKU!?では顔も見えない一般女性に「チャラい」「勘違い」「調子に乗るな」など辛辣なダメ出しをされ、「濱キス」から続くテレ朝深夜枠では過酷な企画に挑戦し、UTAGE!では舞祭組がハモリができないことをいじられたりする。

UTAGE!での中居を見ている度に、中居は舞祭組に教え続けているのだと感じる。プライドを捨てろ、カッコ悪いところを見せてでも挑戦し続けろ、そうでなきゃ一般人の心は掴めないんだぞと。

きっと、ファンの方の中には、こんなキスマイは自分が見たいキスマイじゃない、と思っている方もいるだろう。先ほどのフレーズを引用すると、「ダメ人間宣言」などしなくてもいいと。彼らのライブで見せるパフォーマンスはとてもかっこよくて、キラキラしていて、彼らはとてもバカにされるような人達じゃないんだと。別に一般層に受けなくてもいいから、ファンの前で、キラキラ輝いてるスーパーアイドルでいてくれればいいのだと。

そのような考え方はもっともだと思う。特に、ジャニーズアイドルは、世間的には「あのグループ最近見ないよね」「落ち目だよね」などと言われていたとしても、大きなライブ会場を埋められるだけのファンがいる。それで十分なのかもしれないし、そういう「コアなファンを大事にする」という方針のグループがあってもいいと思う。(もちろんそういうグループが、新規のファンを全く意識してないなんてことはないだろうし。)

ただ、Kis-My-Ft2はそういう道に進まなかった。事務所の意向なのか、派閥の意向なのか、本人達にどれほど決定権があるのか、それはこちらには全くわからないけども、とにかく彼らはバラエティの場で実績を残し、ジャニーズに興味のなかった一般層を味方につける活躍をしている。

彼らは、自分自身の努力と決意で、この時代のチャンピオンを本気で獲りにきてるんだと、そう思う。

 

最後に、北山が雑誌*2で語っていたことを引用して終わりにします。

みんな、デビューした時に、いい意味で一度プライドを捨てられたんだと思う。カッコつけてたってできないし、面白くないですから。

時にはつらすぎて泣きたくなったり、不本意ないじり方をされたり、これが本当に自分達がやりたかったことなのかと悩むこともあると思う。

それでも、今が幸せだと言い切る7人だから、私はキスマイが好きなんだ。