重箱のすみ

アイドルとの距離感の取り方は、いつまでたっても難しい

終わらないことを目指すもの

今月7日に発売された、POTATO最新号の2015年9月号。POTATOは8月号と9月号の2回に渡って、「デビュー5年目突入企画『キスマイResearch』」という企画をやっている。これは過去のインタビューで何と言っていたかを本人が振り返ったり、10年前と同じメンバーで同じテーマについてトークしてみたりする企画で、過去を知らない私のような新規ファンにとってはとてもありがたいものだった。その中に、メンバー自身が過去の転機となった場面について語る箇所があり、千賀はこうコメントしていた。

横尾さんとガヤさんが、「敬語や『くん付け』を辞めよう」と言ってくれたことも大きかったし、デビュー直後、宏光と濃い話をしたときに「5年待て」と言われたことも大きかった。当時は意味がわからなかったけど、今思うと、「宏光、やるな」という感じだね。 

 

以下は、私の想像や推測が多分に入ったものになってしまいますが、どうかご了承ください。*1

この時に千賀が北山に何を言ったのか、どんな濃い話をしたのか、そして北山の「5年待て」の真意とは何だったのか、というのは、ここでは語られていない。その頃の気持ちを詳細に明かしてくれる時は、きっともう少し後になるんだろう。

ただ、何となく推測されるのは、おそらく千賀は北山にいわゆる3:4の格差の話をしていたり、こんな状況で自分はどうすればいいかというような話をしていたのではないかということ。そして「5年待て」と返した北山は、本当の勝負は5年後だと思って、その頃には格差などの諸々も好転している事を信じて、進んできたんじゃないかな。そして、デビューから目まぐるしく与えられる様々な課題を乗り越え、目の前のお仕事一つひとつを大切にしながらも、その通りになるように決意していたんじゃないかな。

そうは言っても、この時の千賀は、北山の発言の意味が分からなかったと言っている。確かにそうかもしれない。「東京に来たらデビューさせてあげるのに」的なことを言われて、その言葉通りに名古屋から東京に出てきて、でもそこから実際にデビューするまで7年かかって、それなのにやっとデビューできたと思ったらこの状況。前の3人ばかり目立ち、後ろの4人とバックで踊っているJr.との境目がわからない*2。ここからさらに5年待てと言われるなんてびっくりだし、5年待ったからと言って状況が好転しているとは信じられなかったのかもしれないですね。でも、私のような超新規が言わせてもらうのも本当におこがましいんですけども、そこから月日が流れて、デビュー5年目に入るというこの時に、彼らが耐えてきた時期につけた実が、着実に花開いてきたんじゃないでしょうか。

 

 私は、少なくとも2012年にはキスマイのことを認識していたと思う*3。けれどその頃には明確な衣装格差があって、まだ中居も3:4の構図を大々的にイジっているほどではなかった。私はその状況を見て、「後ろの4人本当にかわいそうだな」と思ってしまったのが正直なところだった。前回のブログにも書いたけど、突然始まったSMAPのバーター売り*4に戸惑ってしまったこともあって、「なんだかキスマイを好きになったら大変そう」という意識が働き、深入りするのを辞めてしまった人間だ。だから、当時の格差戦略が必ずしも良かったかどうかというのはわからない。

けれど、彼らはそれを武器にして、他のグループにはないカラーが生まれた。まずは3人の顔を世間の人に覚えてもらい、その後4人を売り出すことにより、時間をかけて、でも着実に世間に浸透した。そして最近はやっと7人が横並びで、それぞれの顔もキャラも均等に取りあげてもらえるようになってきた。このタイミングで彼らに堕ちた私は、結果的にデビュー5年目にさしかかるところで好きになったのだから、完全に術中にハマっている。言うまでもなくそれは、彼らがどんな状況でも諦めずに甘えずに、自分達の魅力を磨き続けてきたからこそだけれど。

もちろん、デビュー前からキスマイのことが好きな方も、デビュー後からキスマイのことが好きな方も、私のように最近になって好きになった方も、その中でも3:4の構造が面白いなと思って好きになった方も、それは納得できないけれど彼らが好きだから応援しようと思っている方も、色々いろいろいらっしゃるだろう。何が言いたいかというと、きっと、グループが年月を重ねるごとに売り出し方は段々変化して行って、その時々のタイミングで、その時々に気になった人のアンテナに引っかかるようになるのだろうということ。だから、彼らに求められることは、今目の前にいるファンを楽しませることと同時に、どうやったらこのグループをずっと輝かせていけるか、さらに大きくしていけるかという長期的な考え方ではないだろうか。

 

以前、こちらのブログを拝見して、とても驚いた上に感銘を受けた。

sasagimame.hatenablog.com

 

こちらの記事では、SMAP以前はジャニーズのグループも解散することが当たり前だったこと、さらにSMAP以降その常識が変わったことを、多くの文献に基づく詳細なデータをふまえて丁寧に解説してくださっている。私は小学校5年生くらいからSMAPが好きで、当時の彼らの活動年数はデビューしてから10年目。こちらの表を拝見すると、SMAP以前に結成されたグループの中で、活動年数が10年を超えていたグループはほとんどなかったことがわかる。私は、その頃はSMAPがいる毎日が当たり前のように感じていたんだけれども、それがどんなに信じられないことで、どんなに前代未聞なことで、どんなに挑戦的なことだったのかっていうことを、最近になってようやく実感できるようになっていた。当時は小・中学生っていうこともあって、ことの重大さがよくわかってなかったのだ。

SMAP以降のグループは、「ずっとこのグループを存続させる」ことが「常識」になった。それぞれが単独活動を行い、ソロ歌手・ドラマ・舞台・バラエティなどなど多方面に活躍するようになった。けれど、コンサートを行う時には、メンバーは家に帰るように集まってくる。歌やダンスでファンのみんなを魅了する時、それは文字通りの「ホーム」である。何年たってもアイドル、アラフォーでもアイドル。こういう傾向を当たり前のように思っていたけれど、それは本当にここ15年くらいでSMAPが作り上げた新しい概念なんだよなぁ。

 

以前の多くのジャニーズグループは、メンバーが脱退した時点で解散を考えている場合が多い。SMAPも森くんという脱退メンバーがいたのに、でもそこで解散というところに至らせなかったものが何なのかは、未だにハッキリとは分からない。でも、昨年3月の「笑っていいとも!」の最終回での中居のスピーチに、そのヒントがあるような気がするのだ。

drifter-2181.hateblo.jp

やっぱり、バラエティって非常に残酷なものだなとも思います。
おかげさまで歌もやらさせてもらって、お芝居もやらさせてもらって、バラエティもやらさせてもらって、

歌の世界っていうのは、いずれライブとかやれば最終日があって、
ドラマもクランクアップがあって、映画もオールアップがあって、
始める時に、そこのゴールに向かって、それを糧にして進んでるんじゃないかなって思います。
でもバラエティは、終わらない事を目指して、進むジャンルなんじゃないかなと。
覚悟を持たないと、いけないジャンルなんじゃないかな。

(中略)

非常にやっぱり、バラエティの終わりは…寂しいですね。

他のジャンルは評判がよかろうが、悪かろうが、終わりがあるんですけど、

バラエティって…ゴールないところで、終わらなければならないので、
こんなに…残酷なことがあるのかなと、思います。

 

 この中居のスピーチを聞いたとき、私は衝撃を受けた。「バラエティ」という明るく楽しい陽の雰囲気にあふれた世界のことと、「残酷」という言葉が全く結び付かなかったのだ。そんな風に考えたことがなかった。そして中居は、ここではバラエティについて語っているけれども、この「バラエティ」という単語を「グループ」とか「SMAP」に置き換えても同じなのではないかと思うのだ。

グループで『終わらないことを目指す』というのは、過酷なことだ。常に進化し続けることを求められる。最高のコンサートが作れたと思っても、その翌年にはそれを上回ることが目標となる。いいものが出来なかった年は非難もあるだろうし、テレビに出る機会が少なくなったら「もう○○は落ち目だな」と厳しい言葉をぶつける人もいるだろう。

けれど同時に、やっぱり、夢があるなとも感じる。私は小さいころからSMAPが好きで、人間関係でつらくなった時とか、進路で悩んだ時とか、嫌なことがあった日とか、SMAPの曲を聞いてたくさんたくさん励まされてきた。自分の好きなアイドルが、ずっと活動し続けて、いつだって自分の人生の隣にいて、辛い時に勇気をくれること。そっと励ましてくれること。笑顔になれること。デビューっていうのは、それを約束してくれること、「終わらないことを目指す」のを誓ってくれるっていうことなのかなと思う。

 

冒頭の千賀の話に戻って考えてみる。SMAP以前だったら、5年と少しで解散してしまったグループも多くあった。もし今も同じくらいの活動期間が主流だったとしたら、「後ろの4人」は全然日の目を浴びないままとなってしまう。けれど今の時代はそうではない。「終わらないことを目指す」のが主流だ。だから、なかなかデビューできなかった日々も、デビューしても格差があって舞祭組として吹っ切ることすらできなかった日々も、全部、何年か先にさらに輝きを増すための糧となるといいですね。

そして、学生時代をほとんどSMAPに支えられて育ってきた頃の私のように、Kis-My-Ft2は今悩んでいる人達に勇気と希望を与え続けて、ずっと人生の隣にいてくれるような、そういうグループになるといいですね。そういう人が、もっと増えるといいですね。

 

デビューするまでも勝負だし、デビューしてからも勝負の連続だ。

過酷な道を、7人で支えあって、わちゃわちゃ笑顔で進んでいってください。

デビュー4周年、おめでとうございました。*5

 

 

 (参考にさせていただいたブログ様一覧)

「After SMAP ~SMAPがジャニーズを変えた3つのターニングポイント~」 - 小娘のつれづれ

 

ジャニーズアイドルの本から見る解散の歴史(前) - over and over

 

ジャニーズアイドルの本から見る解散の歴史(後) - over and over

 

「家」を失ったSMAPの来し方と行く末(「笑っていいとも!」最終回感想に代えて) - あいこそすべてセカンドエディション


 

 

POTATO(ポテト) 2015年 09 月号 [雑誌]
 

 

*1:いつもです

*2:実際今そういう状況になってしまっているグループもあるので本当に心が痛いです…

*3:なんでかというと、2012年8月にスマスマでやってたSMAP×キスマイの歌コラボは見た覚えがあるから

*4:バーターっていうか、担当の班的に共演できる先輩がSMAPしかいないからその組み合わせばかり見るというだけなんだけどね、ということを理解できたのはだいぶ後の話

*5:本当はこれを8/10にアップしようと思っていたのに全っ然終わらなかった…