重箱のすみ

アイドルとの距離感の取り方は、いつまでたっても難しい

デパートの屋上が似合うね

UTAGE!という酔狂な番組がある。その酔狂な番組は、8/17放送回から、昨日9/7放送回の全4回に渡って、「UTAGE!夏合宿」と題し、なんでだかよくわからないがロケに出た様子を放送していた。なんでだかよくわからないが、アシスタントの渡辺麻友の出身地である埼玉県に行き、なんでだかよくわからないが「試練を乗り越える」というテーマのもと、様々な場所で路上ライブやゲリラライブを行い、度胸をつけたり初心に帰ったりUTAGEアーティストメンバー内での絆を深めたりしていた。

8/24の放送分では、川越駅に隣接する、アトレ川越という駅ビル(デパート)で、UTAGEメンバーが行った緊急ライブの様子が放送された。この日はTEEがライブを行うということが急遽お客さんに告知され、チラシも配られた。しかし、それを見て集まったお客さんの前には、TEEだけでなく様々なアーティストが現れ、デパートの屋上に設置された特設ステージでパフォーマンスが繰り広げられたのだった。

お客さん達は、指原・峯岸・山本、E-girlsのAya、IVAN、KABA.ちゃんなど、次々と出演する豪華アーティストに大盛り上がり。そうして4曲ほどパフォーマンスが続いた後に、中居は「じゃあ次。舞祭組、行け」と突然の無茶ぶり。舞祭組の4人は戸惑いながら椅子から立ち上がる。それもそのはず、彼らはこのデパート屋上の野外ライブに出演する予定だとは知らされていなかったのだ。リハーサルどころか、歌う曲も、その曲のサイズもわからないまま、中居に「早く、時間ないから!」と急かされる。こうして、気温30度を超える猛暑の野外に、スーツのまま、放り出される4人。

舞台に上がって、何も知らなかったお客さん達の大歓声が上がる中、『やっちゃった!!』のイントロが流れ始める。しかもテレビバージョンの尺ではなくカットなしのフルコーラス。全員テレビサイズだと思っていたため、全員でフリを間違え「あっ違う!!」と言ったり、立ち位置がわからなくなったりとわちゃわちゃ。けれど、千賀が『イヤミばっかり言ってる上司に~』と冒頭のフレーズを歌い始めると、そこからは一気に空気が変わる。突然振られたとは思えないくらい音程も安定していて、その歌い出しを聴いた瞬間に「あぁ、もう大丈夫だ」と思った。その後の二階堂のソロも伸びやかな歌声で、さらにその二階堂の周りを囲む振付の3人も笑顔がキラキラしていて。サビの宮田も、美しい歌声なのに気持ちが伝わってくるパワフルな歌い方。せっかくフル尺をやったのに、放送では、「いつまでたってもまだ飲める~」のところと、横尾師匠のソロがバッサリカットされた件は絶対許さないんだけども。でも、とにかくとにかく、猛暑の野外の中スーツで踊り、限界まで声を出し、倒れそうになりながらも全力を出し切るこの舞祭組のステージが、本当に本当に素敵で、キラキラしてて、かっこよくて、胸を打たれてしまったのだ。

 

「デパートの屋上が似合うね」なんて言ったら、怒られてしまうだろうか。

相手は、ドームクラスでコンサートを行っているKis-My-Ft2だ。それを、見たところ100人ちょっとくらいのお客さんしかいなかった、デパートの屋上の野外ステージが似合っていたなんて言ったら、そりゃ、失礼かもしれませんよね。

でも率直に言って、そう思ったんだ。あのステージが似合っていた。それは、間違っても「キスマイの後ろの4人には小さいステージがお似合い」って意味じゃないんです、どうかそれだけは。どういうことかと言うと、彼らには「こんな小さなところに立ってやってる」というような驕った感じはもちろんなかったけれども、それと同時に、こちら側が「こんなアイドル様がこんなステージに立っているのを見るのは忍びない…」と思ってしまうような、過剰に恐縮してしまうこともなかったように思えるのだ。例えば今回だって、舞祭組ではなく「キスマイの4人」としてステージに立ち、きらびやかな衣装を着て、キスマイの楽曲をやっていたら、また全然違った雰囲気になっていただろう*1。そうだったらきっと、小さなステージに立っているところは似合わない。「ここに!いるべき方々じゃ!ありませんよ!」と大声を出して止めてしまいたくなると思う。けれど、舞祭組として出ていた彼らは、そうやってこちらに余計なことを思わせてはいなかった。

これはもう私の感覚なんだけれども、アイドルって同じ人間だけれども、同じ人間ではないように思えるのだ。甘い歌声で数万人を魅了したり、セクシーなダンスで一瞬にして心をつかんだり、常人ではできないようなアクロバティックな技をやったり。普通に生きてきたら身につけられないような技術を身につけている*2。同じ人間ではあるけれども、一般市民とは住んでいる世界が違う人達。決して交わらない雲の上の存在。

それに対して舞祭組は、私達の住んでいる一般世界まで降りてきてくれているような気がするのだ。彼らはその姿で、その全力パフォーマンスで、全てを伝えてくれている。「毎日大変だよね、いろいろあるよね」「上司*3に無茶ぶりされてしんどい時もあるよね」「けど明日も最初は笑顔で始めようね」って。私達と同じ世界で、同じように戦っているように感じられて、だからこそ、彼らの言葉が信じられる。屋上の小さいステージで、スーツ着て踊る4人は、一般市民の中にいるヒーローのようだった。

アイドルらしいアイドルと、アイドルっぽくない舞祭組の、どちらがいいとか悪いとかじゃなくて。それぞれに味があって、その2つの顔を使い分けている4人は、最高にかっこいいなと思うのですよね。やっぱり舞祭組の一番の魅力は、自虐ではなく、「どんな時でも、どんな場でも全力」ってことであってほしいんですよね。

 

前に、確かめざましテレビのインタビューだったと思うんだけど、二階堂が「舞祭組でライブやりたい。絶対大きいところではできないから、ショッピングモールの屋上とか」って言っていたことがあった。確かにそういうところでやってほしいけれども、本当は本人達だってわかっているはずだ、今の彼らはそういうところではできない。きっと人が殺到して、大パニックになって中止になる。舞祭組のコンセプトとしては合っているけれども、人気に見合うキャパシティではない。

だからまぁ、今回番組の一企画だけれども、そして一曲だけれども、夢がかなってよかったねぇ。UTAGEには10回中9回くらい文句言ってるけど、そのうちの1回が本当に胸がいっぱいになるくらい良い回で、その1回が残りの9回を全て吹っ飛ばしてくれるから結局感謝せざるを得ない感が悔しい。ただとりあえず、早急に、このデパートの屋上で歌う「やっちゃった!!」のフルバージョン、ガヤガヤ言いながら見ているUTAGEメンバーの音声も入っていない、純粋にステージの音声だけのバージョンを放送してください。もしくは売ってください。買うから。

 

デパートの屋上が似合うね。

そんなみんなが大好き。

  

 

 

*1:今日そんな状況はなかなかないだろうけど

*2:そもそも小さいころからジャニーズの世界にいるので普通に生きていないんですが

*3:中居のような