重箱のすみ

アイドルとの距離感の取り方は、いつまでたっても難しい

わたしの道しるべ

(本記事は、舞祭組のシングル『道しるべ』の初回A・初回Bに収録されている特典映像の内容に言及しています。ご了承の上お進みください。)

 

2017年1月4日に発売された、舞祭組の4枚目のシングル『道しるべ』。これまでの3枚のシングルは中居正広が作詞・作曲を手掛けていたが、今回は舞祭組4人がセルフプロデュースで楽曲制作を行った。その初回生産限定盤Bには、『舞祭組10days合宿ガチドキュメント』と題して、4人が10日間、文字通り寝食を共にして、合宿で楽曲制作に取り掛かった様子が収録されている。

その初回Bの特典映像は、舞祭組4人が会議室に呼び出されるところから始まる。そして、顔は映っていないが、avexのスタッフさんが彼らに語り始める。2015年のコンサート中に中居が乱入して舞祭組のアルバム発売を発表したこと、その後中居とも何度か打ち合わせをしたこと、けれども、現在はその話を進めるのが難しいこと。そのため、舞祭組を今後もやるのかやらないのかも含めて、決断は全部4人に任されたこと。

それを聞いて二階堂さんは話し始める。「なんかさ、舞祭組で番組に出たときにさ、(アルバム)作ってくださいよって言ったんだけど、『それどころじゃねぇよ』みたいな感じで言われちゃって」。それを聞いて千賀さんが伏し目がちに続ける。

「それは冗談だって思ってたんだけどね…」

私はここで、いたたまれなくなって、DVDの再生を一旦止めてしまった。天を仰ぎながらため息をついた。

あぁ、ついに、この日が来てしまったか。

 

もしかしたら、他のグループのファンの方にとっては意外なことかもしれないけれど、実は、Kis-My-Ft2は、一度として、オフィシャルにSMAP解散について言及したことがない。雑誌や、ジャニーズウェブ内のブログで、なんとなくこの諸々を示唆しているんだろうなと思うような記載はあっても、直接語ったことは一度もない。他のグループでは、ニュースやワイドショー番組に出演しているメンバーがいる場合は、その人が番組内でコメントしている。また、2016年の紅白歌合戦に出場していたジャニーズのグループは、そのリハーサルの囲み取材でコメントを求められている。キスマイはそのどちらにも該当しない。そういう機会があるとすれば、舞台の発表記者会見だろうけれども、9月のDREAM BOYS、12月のジャニーズオールスターズアイランドの際も、キスマイのメンバーがSMAP解散にコメントを求められた様子はなかった。(もし、私が知らなかっただけで、コメントがあった場合は本当に申し訳ありません。その際は教えていただけるとありがたいです。そして私の情報収集能力の低さを笑ってください)

その状況を、「キスマイにはコメントする機会すら与えてもらえないのか」ととらえる方もいらっしゃったようだけれど、個人的には、キスマイには何も言ってほしくないと思っていた。以下は8月の私のツイート。

 

twitter.com

twitter.com

twitter.com

 

我ながら頭がおかしい。ちょっと何言ってるかわからない。今思い返してみても8月の後半は一番頭がおかしかった。

でも、この私の気持ちが通じたかのように、彼らは一年間沈黙を守り通した。

何度も言いますが、私の情報収集能力が低くて本当はオフィシャルで言及していた場面があったら申し訳ありません。どちらにしろ私は、この時まで、キスマイが、SMAPの諸々のことについて直接言及している姿を見たことがなかったのです。そう、千賀さんが「その時は冗談だって思ってたんだけどね」という日まで。

ついにこの日が来てしまった。彼らがその事実を知らないわけなんてない。けれども、知ってるんだっていうことを自分の目で確認してしまったことのショックは大きかった。でも、わかってる。頭ではわかってるんだよ。だけど頭と心が一致しない。

SMAP解散が確定していない世界線で生きているかのように振舞ってほしい」なんて、無理に決まっている。

だって、そうだったら、「道しるべ」という曲は生まれなかった。

 

 

話は少し前に戻る。

私がこの曲を初めて聴いたのは、2016年の12月26日だった。確か、当日に突然の告知で、文化放送の「レコメン」内で本日初解禁するよという告知があったと記憶している。

その日はスマスマの最終回だった。放送前から、納得なんて絶対できないだろうなと思っていたんだけど、最後の「世界に一つだけの花」を見て、中居の姿を見て、それは想像していた以上の納得できなさだった。疑問と無念さと遣る瀬無さばかりが残る。これで終わりだって言われても信じられなかった。

その直後に、いろんな思いに包まれながらも聴いた「道しるべ」。あまりの直球な歌詞にびっくりしてしまって。聞いた後にうまく言えないけれど、「つらい」「本当につらい」しか言えなくなってしまった。

率直な感想としては、「そこまで背負わなくていいんだよ」というのが一番の気持ちだった。ここまで直球な歌を作ってくれたことは、いちSMAPファンとして嬉しかった。けれどもそれ以上に、「ここまでする必要があるのだろうか」と思ってしまったことも事実で。だって、これから彼らに色んな声が飛んでくるかもしれない。例えば、「SMAP解散に便乗している商法だ」って思っている人もいるかもしれない。例えば、「私はSMAPがこれで終わりだなんて思っていないのに勝手に終わらせるな」って思っている人もいるかもしれない。本人達は純粋な気持ちだったとしても、どうやったって厳しい意見は飛んでくる。彼らにそういう思いをさせてしまうのも、なんだか申し訳ないなって思ってしまったのだった。一体誰目線なんだよって話だけれども。

そこまでして重い荷物を背負う必要があるのだろうか?

 

ずっとそう思っていた。けれど、初回Bの合宿ドキュメントで、楽曲制作に取り組んでいた姿は、ワイワイ大騒ぎして、ちょっぴりおバカで、それでも全力で。もちろん、この特典に入っている姿は本当に一部だし、カメラに映っていないところでは、大変なことも、きついことも、きっといっぱいあったと思うけれども。それでも、彼らのいいところが全部出ていたし、思っていたよりも軽い雰囲気だったので、それを見ることができて私の心も少し軽くなった。

それに続いて見た初回Aの、ミュージックビデオメイキング映像。撮影の裏側を見せていく途中で、4人に率直な「舞祭組への想い」をインタビューする場面がある。その時に、千賀さんは穏やかな笑顔で、こう語った。

 

ホントに嬉しいね。うーん。なんか、正直言うと、もしかしたらこのままなくなっちゃうんじゃないかとか、個人的に何もわからなかったから、ホントにすごい不安だったし…。でもこうやって、まぁ…まぁいろいろあったけども、まぁこうやって再スタートできて、ホントに幸せ。良かったなぁって。だから、今日のPV撮ってる時も、ホント何回か泣きそうになったもん。

(中略)

舞祭組っていうグループを組ませてもらって、他のジャニーズのグループにはない、すごい、こう…振り幅を感じたのね。「あぁ、これは俺達にしかできないものになるな」。すごい、この先大きな糧になるし、自分の中ですごい…大切な存在だなぁって。

 

 ……圧倒されてしまった。もう、ごめんねって思った。穏やかな笑顔で、だけどはっきりとした口調で、ストレートに思いを伝える姿。色んなことがあって、色んな思いがあっただろうに、「ホントに嬉しい」「ホントに幸せ」という言葉で、すべてを包み込んでしまう。

いろいろと厳しい言葉を投げかけられてしまうことなんて、本人はきっと承知の上だ。それでも、何をおいても、「嬉しい」「幸せ」という言葉が最初に来るんだね。強いね。本当に。私なんかが「彼らが色々言われてしまって大変だ」なんて、そんな心配は無用だよね。

千賀さんが大丈夫だって示してくれた。私が初めて道しるべを聞いて、「彼らが重い荷物を背負いすぎるのは心苦しい」って思っていたことに対して、本人が「幸せだ」ってハッキリ言ってくれた。だから、これで解決した…はずだった。

 

……それなのに、この気持ちはなんだろう。

自分が懸念していたことは解決したはずなのに、言い表しようのない苦しさ。道しるべを聞けば相変わらず、いい曲なのに「つらい」という言葉しか出てこない。この気持ちは何なんだろう。

そこで私は、改めて、自分の気持ちに向き合わなければいけなくなったんだ。他の人がどう思うかってことではない。結局、自分がどう思うかってことなんじゃないのか。「道しるべ」を聞いて、自分はどう思うのかを、ちゃんと考えなきゃいけないんじゃないのか。

本当は、どうしてつらいのか、最初からわかっていたくせに。

スマスマの最終回を見て、こんなのが最後なんて嫌だって思った。けれどもその直後に聴いた道しるべの歌詞で、本当にこれで終わりなんだって実感してしまった。時間ってもう戻らないんだって思い知らされてしまった。それを他の誰からでもない、彼らの言葉で聞いてしまった。それがつらかったって、わかっていたくせに。

「『これで終わりだなんて信じたくないのに勝手に終わらせるな』って思っている人もいるかもしれない」だなんて、見えない誰かのせいにしている場合ではない。本当はその言葉を言ってしまいたいのは、他の誰かではなく、今の自分だって、わかっていたくせに。

気付かないフリをして逃げようとしても、もう他人のせいにはできない。

 

頭と心が一致しない。

もう時間は戻らない。SMAPの5人の新しい道を応援するべきなんだ。頭ではわかっている。けれど心がついていかない。そんな中で発表された道しるべは、少々私には刺激が強かった。これが正解なんだってわかっている。だけど心がついていかない。そして、そんな私は「正しいファン」ではないのではないかなって思ってしまった。

だって、どう考えたって、舞祭組が言っていることのほうが圧倒的に正しい。「大好きな人が決めたことだから受け入れるよ。泣いたって仕方ない」っていうあまりにも強い言葉、圧倒的な正しさだ。これ以上の正しさはない。

どう考えたって、2016 年の後半に、「あ~つら……」「は~つら……」「生きるってしんどい……」などと言うだけだった私より、色んな気持ちがあろうともそれを整理して曲にしてまとめ上げた彼らの方が、圧倒的に正しい。

でも、時として、正しいことがすべて受け入れられるわけではないんだなっていうことも実感した。彼らと同じように思えない私は、置いて行かれてしまっているような気持ちになった。

圧倒的な正しさの前に、私は無力だった。

 

そんな私に転機が訪れたのは、1/22のAIR-G公開録音の放送だった。舞祭組は道しるべが発売された週に、全国各地を回って、地元のテレビやラジオ番組の公開収録を行っていた。AIR-Gは北海道のラジオ局で、私はradikoを使ってその放送を聴くことができたんだけれども、これがまたすごい放送で。1時間全部舞祭組だけ。じっくり話を掘り下げてくれて、楽曲のことや合宿の裏話などもたくさん聞くことができた。そして、今までの舞祭組のシングル4曲すべてを流してくれるという、嬉しすぎる心遣いだった。素敵な番組だったなぁ。

ちょっと話が逸れたけれど、そう、その放送の時に、横尾さんが、「この曲を聴いた人は感じ方がそれぞれ違ってもいいと思うし、違ってもいいように作った」という感じで言ってくれたんだ(すみません、録音していなかったので超うろ覚えで申し訳ないです)。

「感じ方が違ってもいい」という言葉、きっと横尾さんが思っていることと、私が思っていることはちょっと違う。多分横尾さんは、この道しるべの「大切な人へ向けた歌」っていうコンセプトを、その大切な人は特定の人じゃなくて誰でも、それぞれの大切な人に当てはめていいよっていう意味で言ったんだと思うんだ。だけど、私には、その「感じ方が違ってもいい」という言葉が本当に深く染みた。彼らと同じように思えない自分はダメだって、勝手に思い込んで追いつめて。そんな自分を解放してくれたように思えた。

人が物事を受け入れるのって、感情の問題だから、頭ではわかっていても、本当に受け止めるまでに時間はかかる。差は出るよ。でも、いつかは心から納得して次に進みたいって思ってはいるんです。

こんな気持ちも、わかってくれますか。私のこと、待っててくれますか。

 

私は、スマスマ最終回の直後にこんなツイートをした。

 

 

twitter.com

 

なんか、すっごい偉そうなことを言っているけれども、他人事のように言っているけれども、でも後から考えたらこれって、別に本人達だけじゃなくて、みんなに言えることなんじゃないかって思ったんだ。

私はSMAPができた後に生まれたので、SMAPがいない時代を生きたことがない。でもそれだけじゃない。この世界に、SMAP解散した後の時代を生きたことがある人は誰もいない。

なんでこんなことにって今でも思うし、どこかにSMAPが解散しなくてもすむような世界が存在してたんじゃないかって思うし、それでも、それでもさ。

SMAP解散してもさ、生きていかなきゃいけないんだよね、私たち。

これから先もずっと。

SMAPが解散していない世界で生きているかのように振舞ってほしい」なんて、私の思考がいかに浅はかだったことか。そんなユートピアは存在しない。

彼らが今いるのは、泥臭くて残酷な現実だ。

彼らが戦ってるのは、どこまでもどこまでも現実だ。

 

これからも一緒に生きていきたいの。

SMAPが解散している世界でどうやって生きていくか、私もわからないけど、きっとあなたたちだってわからない。

それでも前に進みたい。どうやって生きていくか、あなたたちを見ながら進みたいんです。

あの「大切な人」は、みんなの道しるべだったと思うけれど、私にとっては、キスマイが、舞祭組が、その姿が、道しるべのように思っています。

私の道しるべに、なってくれますか。

 

わかってます、わかってます、彼らにここまで求めるのは良くないと思っています。だから自重します。だけど、どうしようもなくつらくなった時、泣きたくなった時、頼ったり甘えたりしてもいいですか。

頭では、良くないとは思っています。だけど、彼らには、こんな気持ちも受け入れてくれるような強さもあるように、心では感じてしまうのです。

やっぱり、どうしても、頭と心は違うのです。