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重箱のすみ

こんな世界で戦う7人のことを書きたくて

ジャニーズ文化と "Me,We,Now"

Kis-My-Ft2

先日発売された、TVガイドPERSON最新号の、横尾渉さんインタビューを読みました。この雑誌は少々お高めではありますが、まさに名の通り「人」に注目して、その人の目標や信念など深いところまで掘り下げたインタビューをしてくれるので、とても満足感があります。今回も楽しく読ませて頂きました。

去年11月の田口さん脱退発表だったり、年始からのSMAPのもろもろだったり。色々なことがある中で、私自身も色々なことを考えました。普通の人だったら、今の仕事が自分に合わないと思って転職活動をしたり、違う会社に行きたいと思って辞表を提出することはよくあること。それを止める権利は他人にはない。究極を言えば、アイドルだって同じであって。ましてや、まだ社会のことを何にも知らない10代の時に飛び込んだ世界に、これからもずっと身を置き続けると覚悟するのは相当なこと。自分の人生にふと迷いが生じる時があって当たり前だと思う。

でも、だからこそ、私達が望むことと、アイドル本人が望むことが合致するっていうことは、奇跡のようなもので、当たり前って思っちゃいけないんだなって最近すごく感じます。そんなことを考えていたところだったので、横尾さんのインタビューでの、『グループの大事さも、グループあってのソロ活動ってことも身にしみて分かる』『キスマイありきってことは絶対に忘れちゃいけない』っていう部分を読んでグッときました。今、一番嬉しい言葉です。

 

TVガイド PERSON VOL.42

TVガイド PERSON VOL.42

 

 

さて、この横尾さんのインタビューの中で、一点気になるところがあった。それは、インタビュアーの方が、『いつからか横尾さんは自分を解放したというか、荷物を下ろしたのかなという気がする』と問いかけていた。それに横尾さんは『勝手に自分で荷物を背負っていたんですよ、"俺がやんなきゃ"って』と答える。さらにこう続けた。

横尾:そんなにしっかりもしていないのに頑張ろうとして、いつしか自分で自分にプレッシャーをかけていた。多分、"最初"から何やっても出来るねって褒められたかったんだと思う。

――厳しい世界で生きてきて、"できない"という選択肢がなかったのかもしれないですよね。そうじゃないと、生き残れないって。

横尾:そうですね。でも、いろんなバラエティーをやらせてもらう中で思い知ったんですよ。俺、できないじゃんって。だからと言って、できないことが必ずしも悪いわけじゃなく、時に笑いになるってことにも気付けた。"最初からできなくてもいい"と思えたのは大きかったですね。

長めに引用してしまいましたが、続きはお読み頂くとして……

「最初から何やってもできるねって褒められたかった」とか「できないという選択肢がなかった」というのは、横尾さんの性格だけではなく、きっとJr.の頃というのは、そういうことが求められていたんだろうなと感じた。「最初から完璧であること」が正解だったんだろうなと。しかし、その『ジャニーズの美学』が、一般人にとっては高い壁に思える時もあるのだ。

(ここからは、ジャニーズにさして詳しくもない一般人の意見なので、事実とは違っているところも多々あるかとは思いますが、「こう見える人もいるんだな」くらいの感じで捉えて頂けると幸いです)

 

ある話を思い出した。

去年の4月20日、私はたまたまテレビで、堀江貴文氏が出演していた「しくじり先生」という番組を見ていた。ご存知の方も多いと思うが、しくじり先生は、過去にしてしまった自分の失敗談を自虐的に笑いを交えて語り、視聴者に同じ失敗をしてほしくないということを伝えるというコンセプトで作られたバラエティ番組だ。そこで堀江氏は、『世の中をなめすぎて逮捕されちゃった先生』という、だいぶセンセーショナルな肩書き(笑)で登場する。時代の寵児として華々しく活動し、企業買収や選挙出馬など様々な大きなことをやってのけるが、2006年に証券取引法違反で逮捕される。その頃のことを振り返り、堀江氏はある理論を紹介した。

それは「Me,We,Now」理論というもので、相手に自分の目標ややりたいことを伝える際には、<Me(私)、We(私達)、Now(今)>の3点を踏まえて話をするべきだという。以下は、放送の内容をまとめたニュース記事を引用。

「Me We Now 理論」の「Me」は自分を指し、自分の話をして相手との距離を縮める意識のことで、「We」はあなた(相手)と自分を指し、相手との共通点を見出して連帯感を作る意識、そして「Now」とは、今、自分がやりたいことを最終的に相手に訴えるのだという。
かつては堀江氏も、この理論を理解しておらず「私も『田舎出身で、苦労して大学に入って』とかっていう話をしなきゃいけなかった」と反省しつつ説明を続けた。堀江氏が「上場して巨万の富を得た、いけ好かないIT社長」と不信感を持たれ続けたのもそれが原因だったと自己分析した。
堀江氏は、当時は真逆の自分像があったといい「Now」だけで周りに伝わると信じていたことを明かし、当時のジレンマを語ると、改めて「Me We Now」の大事さを強調した。
そして堀江氏は、負け顔を見せれば見せるほど、バリアが無くなり、誰もが声をかけやすくなる、と力説すると「これだけ壮大にしくじった私が言っていることなので、間違いないです」と強調していた。

堀江貴文氏が“しくじり”を振り返り「負け顔」を見せることの大切さを力説 - ライブドアニュース

 

ちなみにこちらは別記事だが、堀江氏いわく、これはバラク・オバマ大統領が、自身の大統領選挙の際に使ったテクニックでもあったのだそうだ。

オバマ大統領はいかにして米国国民に語りかけたのかを、彼らは僕に理論立てて説明してくれました。「MeとWeとNow」、つまり、「私、私たち、そして今」という構成で語りかけたんだと。

バラク・オバマという人は、表面的に見るとスーパーエリートですよね。家はお金持ちで、高等教育を受けて、上院議員で、まあ見た目もよくて、非の打ちどころのない人間に見えるのですが、国民にそう見えてしまったら共感を呼べない。そこで、何ら特別な人間ではなくて、マイノリティ出身で、いろいろな苦労もして、ここまで上り詰めたんだ。みんなと同じ米国国民であり、そして今、米国は何をすべきかを訴えたわけです。

僕も表面的に見れば、進学校を出て、東京大学に入って、在学中に会社を始めて、うまくいって上場して、転落した人という、パブリックイメージはそんな感じでしょう。でも、それだとやっぱり伝わらない。

ホリエモンが、今どうしても伝えたいこと | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

 

私は、しくじり先生のこの箇所を見ていた時、とても納得した。堀江氏が時代の寵児として颯爽と登場し、様々なチャレンジをしていた頃、私はまだ高校生だったのでなにがなんだか詳しいことはわからなかったけれども、大企業に買収を仕掛けたり、選挙に出馬していたりして「すごい自信家」「なんか派手な人」「私とは違う」という印象を持ってしまっていた。もしそこで、上記の引用箇所のように、『私も田舎出身で、苦労して大学に入って……』という話をされていたら、彼に対する見方が全く変わったかもしれない。

 

なぜ横尾さんのインタビューを読んでこの話を思い出したのかというと、ジャニーズは「苦労しているところを見せない」というのが、一種の美学として成立しており、そこに至る過程を見せないから、この「Me,We,Now理論」を使って人を引き込むことができないと感じたからだ。

ジャニーズの皆さん、特にJr.の皆さんは、舞台やコンサートがほとんど全てで、そこで失敗するなんて許されない。その上、どんなに努力をしているかというのは直接的には明かされない。でも一般的には(特にテレビのバラエティは)そうではなくて、結果よりも、成長していく過程を見ることそのものがエンターテイメントになっていると思う。それは、舞台やコンサートが始まる時点で完璧に仕上げていなきゃいけないJr.の皆さんの価値観からすると、全然違うんだろうなって思ったのだ。

もちろんジャニーズのファンのみなさんは、彼らが努力して、もがいて、必死に成長しているのをわかっている。彼らが容姿だけで人気を集めているわけではないことをわかっている。さらに、その努力を表に出さないことが美学だという文脈をわかっていて、それも含めて応援している。けれど、一般層からしたら「隙がない」人には親近感を覚えにくいんですよね。そこに大きなギャップがある。

私は世間のジャニーズに対する風当たりは、少々厳しすぎるように感じられるんだけれども、その一因はこういうところにあるんじゃないかと思うのだ。「ジャニーズなんていけすかない」と思っている方々は、彼らが血のにじむような苦労をしているなんて知らない。恵まれた容姿で、恵まれた環境で、それを武器に女の子達にキャーキャー言われている人生楽勝モードのチャラチャラした人達だと。だからそんな人達が、「みんなに愛される人になりたい」とか「国民的アイドルになりたい」って言うと、「何を生意気な……」と思ってしまう。"Me" と ”We" が共有されていない時点で、これから何をやりたいかという "Now" を突然言われても、困惑してしまうのだ。

私も、キスマイを好きになるまではこの世界についてよく知らなかった。ジャニーズに入ったらみんなデビューが約束されているものだと思っていた。だから、Jr.の中でもデビューできる人達なんて一握りだということ、辞めていく人達もたくさんいること、ずっとこの芸能界で活躍できる未来なんて一切確約されていないこと、それでもそこを目指して頑張っている姿に惹かれるのだということ。本当に最近知ったばかりだ。先ほどの堀江氏やオバマ大統領の話のように、こういう話がもう少し表に出てくれば、一般層は「私と同じように苦労してるんだ、大変なんだ」って感じて、もう少し風当たりも弱まるんじゃないだろうか。最近はとみに、AKBを筆頭に「成長していくストーリー」を見せて、それで売るスタイルが定着しているように思える。特に女子アイドルは、総選挙の裏側とか、シングル選抜の発表とか、レッスンの様子とか、もう余すところなく裏側を公開されていて、その本人達の苦労や努力に惹かれて応援しはじめるケースも大いにある。

ジャニーズの美学を否定するつもりなどもちろんない。けれども、私はこの、「最初から完璧であることを求められる」というジャニーズスタイルが、今後どれだけ世間に通用していくのかなというのは、非常に興味深いところです。*1

 

ちなみに、これは余談ですけれども、SMAPがそういう強い風当たりを乗り越えて国民的人気者になった要因は、「ジャニーズらしさがないジャニーズ」というだけではなくて、結果として「Me,We,Now」を世間に伝わる形でやり遂げてしまったということもあるような気がします。もちろん、メンバー自身が「僕達こんなに苦労してきたんですよ」なんて表立って言うことはない。けれど、デビュー曲で1位を取れず、ジャニーさんに怒られたという話はもはや超有名。それ以外にも、メンバーの脱退、逮捕者が2人出てしまうという騒動、さまざまな困難がありながらも一つひとつそれを乗り越えていく姿が、意図しなくても広く知れ渡ってしまい、結果として一般層に対しては「ストーリーを共有する」ということが出来たというのも、成功の一因だったのかもしれないなと思います。*2

Kis-My-Ft2は結成からCDデビューまで6年。雑誌のインタビューなどでは、その長い下積み時代について触れられることが多いけれども、本人達がそれについて「大変だった」とか「苦しかった」と言っているのは、あまり見ないような気がします。私は好きになった当初、その「ストーリー売り」をしないところにびっくりしました。もっと苦労したことを全面に出しても良さそうなのに。でも、最近になって何となくわかった気がします。その理由は苦労を見せないという美学に加えて、「色々な先輩のもとで勉強させてもらった大切な時間*3」のような発言も多くて、きっと美学だけではなく、本当にそうやって、プラスに捉えてるんだろうなと感じられて。そういうところが、キスマイの好きなところだなぁって思います。

照れ屋さんの集まりなので(笑)、"Me"、"We"を語ることはあまりないけれども、そんな彼らがこれから成し遂げたいと思っている"Now"を、見逃さないようにしたいと思っているところです。

 

*1:もちろん、「世間一般の人なんか理解できなくてもいい」という考えの方もいらっしゃるとは思いますが、私は常々「アイドルにはファンもファンじゃない人も大切にしてほしい」と思っているタイプの人間なので

*2:参考:「After SMAP ~SMAPがジャニーズを変えた3つのターニングポイント~」 - 小娘のつれづれ

*3:直近だと、女性セブンの二階堂さんがこういうことを言っていたと思います